ACUTE LOW BACK PAIN
重い物を持ち上げた瞬間、腰に激痛が走って動けない——
「ぎっくり腰(急性腰痛症)」は、ごく普通の動作でも突然起こります。
腰の痛みやしびれは多くの方が一度は経験する身近な症状ですが、背景に椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、圧迫骨折などの疾患が隠れていることもあります。放置せず、専門的な検査と治療を受けることが早期回復と再発予防につながります。
ABOUT
ぎっくり腰は医学的には「急性腰痛症」と呼ばれ、日常の何気ない動作をきっかけに突然起こる強い腰の痛みを指します。腰をひねる、重い物を持ち上げる、ベッドから起き上がる、くしゃみをするなど、ごく普通の動作でも発症し、強い痛みのため立ち上がることすら難しくなることもあります。
腰椎の関節や椎間板に過度な負荷がかかることで発生し、腰の捻挫や靭帯損傷、椎間板や軟部組織へのダメージ、筋肉や腱の過緊張などが原因と考えられます。通常は数日〜2週間ほどで自然に軽快することが多い一方、痛みが長引く・足やお尻にしびれが出る・安静でも痛みが引かない場合は、他の病気の可能性も考慮する必要があります。まれに感染症やがんの転移による骨折が原因のこともあるため、自己判断せず早めにご相談ください。
発症時の注意点 — 慌てず、痛みが和らぐ姿勢で安静に
突然の激痛に驚かれるかと思いますが、深呼吸をして落ち着き、痛みが和らぐ姿勢で安静に過ごしましょう。慌てて無理に動く/痛みをこらえてストレッチをする/強くマッサージする/どこまで動けるか無理に試す/入浴/アルコールの過剰摂取/過度な安静——これらは症状を悪化させる恐れがあるため控えてください。
CHECK
こんなときはすぐにご相談を
痛みが数日以上続いている/足にしびれや力が入りにくい感覚がある/夜間や安静時でも痛みが引かない/歩行や排尿など日常生活に支障が出てきた——このような場合は、椎間板ヘルニアや圧迫骨折など進行する疾患が隠れている可能性があります。早急に整形外科での診察をおすすめします。
DIAGNOSIS
診察室に入って椅子に座るまでの動作からも、腰の状態や痛みの程度を大まかに把握できます。問診・触診で痛みの部位や程度、発症のきっかけを詳しく伺ったうえで、X線検査で骨の変形や骨折の有無、骨と骨の間隔の異常を確認します。
痛みが長引いている場合や他の疾患の可能性がある場合は、X線では確認できない椎間板や神経の状態を調べるためにMRI検査などの精密検査を行います。腫瘍性疾患などが疑われる場合には、診断後速やかに連携する高度医療機関へご紹介します。
TREATMENT
強い痛みがある間は無理に動かず、痛みが和らぐ体勢で安静を保ちます。痛みが軽減してきたら少しずつ通常の生活に戻し、動けるようになったタイミングで当院へご相談ください。
軽度のぎっくり腰では、消炎鎮痛剤や湿布薬で炎症と痛みを抑えます。これらで十分な効果が得られない場合は、神経ブロック注射が検討されます。
痛みの元となる神経付近に局所麻酔薬などを注射して痛みを緩和する治療です。内服や湿布で効果が乏しい場合に有効で、即効性が期待でき、仕事を休めない方にも適しています。
強い痛みを伴う急性期には、コルセットで腰部を固定すると動作がしやすくなり痛みも軽減します。ただし長期間の使用は筋力低下の原因になるため、痛みが強い時期に限定して短期間のみ使用します。
再発予防のポイント
普段から正しい姿勢を意識し、腰に急な負荷がかからないよう注意しましょう。重い物を持ち上げるときや前屈みになるときは膝をしっかり使うこと、起き上がる前に軽く身体を動かすことが有効です。体重の増加も腰への負担を高めるため、適正体重の維持を心がけましょう。痛みが落ち着いた後は、当院の理学療法士による運動療法・ストレッチや姿勢・動作の指導で再発予防に取り組めます。
DISEASES
腰痛の原因は一過性の筋肉性の痛みだけでなく、慢性化・進行する疾患のこともあります。以下のような疾患が隠れていないかを見極めることが大切です。詳しくは「腰の痛み」のページもご覧ください。
椎間板が突出して神経を圧迫し、腰から足にかけて痛み・しびれが出る疾患です。腰の鋭い痛みから始まり、お尻〜脚にしびれが広がる、前かがみで悪化するのが特徴で、若年〜中年層に多くみられます。
加齢変化などで脊柱管が狭くなり神経が圧迫される疾患です。歩くと痛み、休むとまた歩ける「間欠跛行」が特徴で、60歳以上に多くみられます。前かがみで楽になる一方、腰痛自体は強くないことも多く、発見が遅れることがあります。
腰椎が本来の位置からずれて神経を圧迫し、腰痛や下肢のしびれ・痛みを引き起こします。加齢による変性すべり症と、成長期スポーツの疲労骨折を背景とする分離すべり症があり、無症状でX線検査から見つかるケースもあります。
加齢などの影響で腰椎が変形し、慢性的な腰痛や下肢症状を引き起こす疾患です。起床時や動き始めの腰痛、長時間の立位での悪化が特徴で、「年齢のせい」と見過ごされがちですが、運動療法や温熱療法、生活習慣の改善で症状の緩和が可能です。
骨粗鬆症で弱くなった背骨が体の重みで潰れる骨折です。転倒がなくても起こる「いつのまにか骨折」もあります。詳しくは「圧迫骨折」のページをご覧ください。
非常にまれですが、腫瘍が腰椎周辺にできた場合も腰痛や下肢症状が現れることがあります。画像診断による早期発見が重要で、疑われる場合は速やかに連携する高度医療機関へご紹介します。
FAQ
Qぎっくり腰になったら安静にすべきですか?
A発症直後は強い痛みのため1〜2日は安静が必要です。ただし、長期間寝たきりで過ごすと筋力が低下し、かえって回復が遅れる可能性があります。痛みが少し落ち着いてきたら、湿布や消炎鎮痛薬で痛みをコントロールしながら、無理のない範囲で少しずつ動くことが推奨されています。
Qお風呂に入ってもいいですか?マッサージは?
A発症直後の急性期は炎症が起きている状態のため、入浴(温めること)や強いマッサージ、痛みをこらえてのストレッチは症状を悪化させる恐れがあり、控えてください。痛みが落ち着いてから、少しずつ通常の生活に戻しましょう。
Qどんな場合に病院へ行くべきですか?
A多くのぎっくり腰は1週間程度で軽快しますが、痛みが長引く、足やお尻にしびれが出る・悪化する、安静にしても痛みが引かない、歩けないほど痛みが強い場合は、腰椎椎間板ヘルニアや圧迫骨折などが背景にある可能性があります。早めの受診と検査をおすすめします。
Q再発を防ぐにはどうすればよいですか?
A腰痛やぎっくり腰は再発しやすいため、正しい姿勢を保つ(猫背や反り腰を避ける)、長時間同じ姿勢を続けない(デスクワーク中は1時間に1回立ち上がる)、体幹や背筋を鍛える運動の習慣化、適正体重の維持が大切です。当院では症状改善だけでなく、再発予防のための姿勢指導・運動療法も行っています。