LUMBAR SPINAL STENOSIS
歩くと脚がしびれて歩けなくなるが、休むとまた歩ける——
「間欠跛行」が特徴の、中高年に多い疾患です。
ABOUT
背骨の内部には「脊柱管(せきちゅうかん)」と呼ばれるトンネル状の空間があり、脳からつながる神経が通っています。脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは、この脊柱管が加齢や変性によって徐々に狭くなり、内部の神経が圧迫されることで、痛みやしびれ、運動機能の低下などが生じる病気です。
加齢による椎間板の変性、靭帯の肥厚、骨の変形などが主な原因で、中高年の方に多くみられます。重量物を扱う仕事や長年の腰への負担、過去の外傷がきっかけとなって発症することもあります。

CAUSE 1
加齢により背骨をつなぐ黄色靭帯が分厚くなり、脊柱管内のスペースを狭めます。脊柱管狭窄症の典型的な原因のひとつです。
CAUSE 2
椎骨が変形して骨のとげ(骨棘)ができると、神経の通り道が狭くなります。加齢に伴ってよくみられる変化です。
CAUSE 3
椎間板が後方へ飛び出して脊柱管を圧迫することがあります。若年〜中年層に多い椎間板ヘルニアが、狭窄症と合併することもあります。
CAUSE 4
背骨の関節や靭帯が肥大・変性したり、腰椎すべり症を合併したりすると、脊柱管の内腔が狭くなり神経を圧迫します。
CHECK
特に「歩くと症状が出て、休むと軽快する」間欠跛行のパターンは特徴的です。思い当たる方はお早めにご相談ください。
SYMPTOMS
3つのタイプ
間欠跛行(かんけつはこう)とは
歩行中に脚のしびれや痛みで歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる現象です。数分の歩行で発症する方もいれば、10分以上歩ける方もいます。腰を前にかがめると症状が軽くなるのが特徴で、買い物カートを押したり自転車に乗ったりすると楽に感じます。安静時には症状がないため、「少し歩く→休む→また歩く」を繰り返すようになります。
TYPE 1
神経の出口(神経根)が一方向から圧迫されるタイプです。片側の腰からお尻、太もも、ふくらはぎ、足先にかけてしびれや痛みが現れます。坐骨神経痛のような鋭い痛みを伴うことが多く、咳やくしゃみ、重い物を持つ動作で悪化することもあります。
TYPE 2
脊柱管の中央にある神経の束(馬尾神経)が圧迫されるタイプです。両側の脚にしびれや脱力感が出やすく、残尿感・頻尿・尿漏れなどの排尿障害、便秘などの排便障害を伴うことがあります。安静時でも症状が残ることがあり、注意が必要です。
TYPE 3
神経根型と馬尾型が合併した状態で、両方の特徴を持ち合わせています。片脚または両脚の痛み・しびれに加え、排尿・排便の違和感を伴うことがあり、間欠跛行も強く出やすいタイプです。臨床では比較的多くみられます。
症状は神経の圧迫部位・方向・程度によってさまざまです。間欠跛行は特徴的ですが、血管の病気(末梢動脈疾患)などでも似た症状が現れるため、正確な診断とタイプ分類に基づいた治療方針の決定が重要です。
DIAGNOSIS
鑑別疾患を含む
症状が出る場面(歩行時・安静時)、痛みやしびれの場所・範囲・強さ、楽になる姿勢(前かがみで楽になるか)、排尿・排便のトラブルの有無、日常生活への影響を詳しくお伺いします。そのうえで、筋力検査・知覚検査・腱反射などの神経学的診察を行い、神経障害の程度やパターンを確認します。
骨の変形やすべり症、不安定性の有無を確認します。脊柱管自体は写りませんが、骨格の全体像をつかむうえで重要な検査です。
脊柱管の中の神経の状態や、椎間板・靭帯の変性を可視化でき、腰部脊柱管狭窄症の診断に最も有用な検査とされています。
椎間板の中身が飛び出して神経を圧迫する疾患です。比較的若い世代に多く、急に強い痛みが出るのが特徴です。詳しくは「腰椎椎間板ヘルニア」のページをご覧ください。
動脈硬化などで脚の血管が狭窄・閉塞し、血流不足により痛みやしびれ、間欠跛行が生じる病気です。原因が「神経」ではなく「血管」であるため鑑別が必要で、重症化すると足の壊死や、脳梗塞・心筋梗塞のリスクにも関わるため、早期発見が重要です。
糖尿病が長く続くことで神経が障害され、足のしびれや痛みを起こします。左右対称に下肢から始まることが多く、灼熱感や刺すような痛みを伴うこともあります。血液検査などで鑑別します。
TREATMENT
多くの場合、まずは薬物療法から開始し、必要に応じて神経ブロック注射やリハビリテーションを併用して症状の軽減を目指します。
症状が落ち着いている時期には、脊柱の柔軟性を高め、姿勢や歩行を改善するためのストレッチや体幹筋トレーニングが推奨されます。当院では理学療法士が一人ひとりの症状に合わせたプログラムを作成し、歩行指導も含めてサポートします。
保存療法で十分な改善がみられない場合や、歩行距離が著しく制限されている/日常生活に大きな支障が出ている/下肢の筋力低下が進行している/尿漏れ・残尿感など馬尾症状が現れている場合には手術を検討します。狭窄部位を広げて神経の圧迫を解除する手術で、近年は低侵襲な内視鏡手術も普及しています。手術が必要と判断された場合は、連携する医療機関へご紹介します。
FAQ
Q自然に治りますか?手術をせずに治す方法はありますか?
A多くは加齢による変性が原因のため自然に完治するのは難しいとされますが、薬物療法・運動療法・ブロック注射・装具療法を組み合わせることで、手術をせずに症状を和らげられるケースが多くあります。悪化を防ぐには継続的な治療と生活管理が重要です。
Qウォーキングや自転車は続けてもいいですか?
A無理のない範囲でのウォーキングは、休み休みでも続けることで下肢の筋力や血流の改善に役立ちます。杖やシルバーカーの利用も有効です。自転車は前傾姿勢で脊柱管の圧迫が軽減されるため楽に感じる方が多く、適度な運動習慣として有効ですが、転倒には注意しましょう。
Qどんなときに手術を検討すべきですか?
A薬やリハビリでも改善せず歩ける距離が短くなっている場合、足に力が入らない・しびれが進行している場合、排尿・排便障害が出ている場合には手術を検討します。該当する場合は連携する医療機関へご紹介します。
Q腰椎椎間板ヘルニアとの違いは何ですか?
A腰椎椎間板ヘルニアは若年〜中年層にも起こりやすく、急に腰や足に強い痛みが出るのが特徴です。一方、腰部脊柱管狭窄症は中高年に多く、歩行時に症状が悪化する「間欠跛行」が代表的で、前かがみで楽になる傾向があります。
Q日常生活で気をつけることはありますか?
A長時間の立位・歩行を避けて適度に休憩を取りましょう。前かがみ姿勢の方が楽な場合が多いため、台所作業や掃除の際に工夫を取り入れると良いです。肥満や喫煙は悪化要因になるため、生活習慣の見直しも大切です。