SHOULDER PAIN
腕が上がらない、夜も痛みで目が覚める——
肩の痛みは四十肩・五十肩をはじめ、腱板断裂や石灰沈着性腱板炎など、さまざまな疾患が原因となっている可能性があります。
肩の痛みは年齢を問わず起こりますが、動かせる範囲が狭くなる、夜間に強く痛むといった症状は、放置すると悪化することがあります。気になる症状がある方は、お早めに当院へご相談ください。
CHECK
こうした症状は、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)や腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、肩関節脱臼、インピンジメント症候群など、多くの肩の疾患でみられます。
症状が続く場合や、動かすたびに強い痛みが出る場合は、悪化や可動域制限を防ぐためにも早期の受診をおすすめします。
DISEASES
中高年に多い、肩の炎症による痛みと動かしづらさ
四十肩・五十肩は中高年層に多くみられる肩の不調で、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。肩の関節やその周囲の組織に炎症が起こることで、痛みや動かしづらさが現れるのが特徴です。炎症期 → 拘縮期 → 回復期の順に進行するため、時期に応じた治療が大切です。
靱帯や関節包の緩みで肩が不安定になり、脱臼を繰り返す状態
肩の前方部分の靱帯や関節包が緩むことで関節が不安定になり、肩が外れかける「亜脱臼」や完全に外れる「脱臼」を繰り返すようになります。服を着る、手を背中に回すといった日常的な動きでも脱臼が起こることがあり、強い痛みとともに日常生活に大きな支障をきたします。
問診・触診で脱臼や亜脱臼の既往、発症時の状況を確認し、徒手検査で肩を一定の方向に動かして不安定性を評価します。X線(レントゲン)検査で骨の形態や骨折・損傷の有無を確認し、靱帯や関節唇の損傷が疑われる場合はMRI検査で詳細に評価します。
保存療法を中心に行います。薬物療法で痛みや炎症を抑え、理学療法(リハビリ)で肩関節周囲筋・肩甲帯の安定化筋を強化して不安定性を軽減します。脱臼を誘発しやすい動作や姿勢を避ける生活指導もあわせて行います。反復性の脱臼が続く場合やスポーツ復帰を目指す場合は手術が検討されるため、連携する医療機関をご紹介します。
肩を支える腱板が切れて、痛みや可動域の制限が現れる疾患
腱板は、肩関節を取り囲む4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の総称で、肩の安定性と動きを支える重要な組織です。腱板が断裂すると、肩の痛みや可動域の制限が現れ、腕を思うように上げられなくなります。転倒や打撲などの外傷のほか、加齢や使いすぎ、小さな損傷の積み重ねでも起こります。中高年に多く、四十肩・五十肩の診察中に偶然見つかることも少なくありません。
問診・診察で発症の経緯や動作時の痛み、夜間痛の有無を確認し、徒手検査で可動域や筋力を評価します。X線検査で骨の形態変化を確認し、エコー検査で腱板の断裂の有無や炎症をリアルタイムに確認します。断裂の範囲や筋肉の状態はMRI検査で詳しく評価します。
断裂の大きさや症状の程度、生活への影響を考慮し、保存療法を中心に行います。薬物療法(消炎鎮痛薬・湿布)で痛みや炎症を軽減し、理学療法(リハビリ)で可動域訓練や肩甲骨周囲筋・三角筋の補強を行って機能維持を図ります。痛みが強い場合は関節内や腱板周囲への注射療法を行うことがあります。大きな断裂で日常生活に支障がある場合は手術が検討されます。
腱板に石灰がたまり、突然の激しい痛みを引き起こす疾患
肩関節の腱板にリン酸カルシウムの結晶(石灰)が沈着し、炎症や強い痛みを引き起こす病気です。特に40〜50代の女性に多くみられますが、男性にも発症します。石灰が沈着する原因ははっきり解明されていませんが、腱板の微細な損傷や血流低下、代謝異常が関係していると考えられています。
症状は急性期と慢性期で異なり、急性期では激しい痛み、慢性期では鈍痛や動作時の痛みが主体となります。症状が似ている腱板断裂や四十肩・五十肩との鑑別が重要です。
問診・診察で発症時期や動作時の痛み、夜間痛の有無、可動域を確認します。X線検査は石灰沈着の有無・大きさ・位置を確認する基本的かつ有効な検査です。エコー検査では石灰の位置や炎症の程度をリアルタイムに確認でき、注射治療のガイドにも有用です。必要に応じてMRI検査で腱板の損傷や周囲の炎症を評価します。
症状の程度や病期に応じて、保存療法を中心に改善と再発予防を目指します。薬物療法(消炎鎮痛薬)で炎症と痛みを軽減し、炎症が落ち着いた後は理学療法(リハビリ)でストレッチや筋力強化を行い可動域を回復させます。痛みが強い場合は関節内注射・腱板周囲注射で炎症を抑え、硬くなった組織の癒着にはハイドロリリースを行うことがあります。
肩を上げる動作で腱板などが挟まれ、炎症や痛みを起こす疾患
肩を上げる動作で、肩峰(肩甲骨の一部)と上腕骨頭の間にある腱板や滑液包が挟まり(インピンジ=衝突)、炎症や痛みを起こす病気です。スポーツ選手や腕を頻繁に使う職業の方に多く、野球、テニス、水泳、バレーボール、塗装作業や大工仕事などで発症しやすいとされています。
問診・診察で痛みが出る動作や生活での支障を確認します。肩を横から上げると60〜120度の間で痛みが強くなる「ペインフルアークサイン」や「インピンジメントサイン」が診断の助けになります。X線検査で肩峰の形態や骨棘の有無を確認し、エコー検査で腱板や滑液包の炎症・損傷をリアルタイムに評価します。必要に応じてMRI検査を行います。
保存療法を中心に症状改善と再発予防を行います。薬物療法で炎症や痛みを抑え、理学療法(リハビリ)で肩甲骨周囲筋やローテーターカフ(腱板筋群)の機能改善、姿勢矯正を行い、衝突を起こしにくい肩の動きを作ります。痛みが強い場合は肩峰下滑液包内注射、癒着や滑走不全がある場合はハイドロリリースを行います。保存療法で改善しない場合は、専門医療機関で手術が検討されます。
軟骨のすり減りによる関節の変形で、痛みと可動域制限が起こる疾患
肩関節の軟骨がすり減り、関節の形態が変化することで痛みや可動域制限を引き起こす病気です。加齢や外傷、反復する負荷が原因となることが多く、特に高齢の方に多くみられます。腱板断裂や外傷のあとに発症する「続発性肩関節症」もあります。
問診・診察で発症の経緯、動作時の痛みや可動域制限の程度を確認します。X線検査で関節の狭小化、骨棘形成、骨の変形を確認し、エコー検査で関節内や周囲組織の炎症の有無を評価します。腱板損傷などの合併が疑われる場合はMRI検査を行います。
保存療法を中心に、症状の緩和と機能維持を目指します。薬物療法で炎症や痛みを抑え、理学療法(リハビリ)で可動域改善や筋力強化、肩甲骨周囲筋の安定化トレーニングを行います。痛みが強い場合は関節内注射(ステロイドやヒアルロン酸)を行う場合があります。保存療法で改善が得られない場合は、人工肩関節置換術などが検討されるため、適切な医療機関をご紹介します。
肩の前面にある腱の炎症で、前側の鋭い痛みが特徴の疾患
肩の前面にある上腕二頭筋の長頭腱が炎症を起こし、肩の痛みを生じる疾患です。腕を繰り返し前方や上方に動かす動作が多い方や、腱板損傷と併発する方に多くみられます。
問診・診察で痛みの部位、発症時期、悪化する動作を確認し、エコー検査で腱の炎症や腫脹の有無をリアルタイムに確認します。腱板損傷などの合併が疑われる場合はMRI検査で評価します。
薬物療法で炎症と痛みを抑え、物理療法(温熱療法・低周波治療)で血流改善と痛みの緩和を図ります。理学療法(リハビリ)では肩甲骨周囲筋や上腕二頭筋周囲の安定化トレーニングを行います。炎症が強い場合は、腱鞘内への局所注射を行うことがあります。
筋肉の緊張と血行不良によって起こる、肩まわりの張り・こわばり
首から肩、背中にかけての筋肉が緊張して硬くなり、血流が悪くなることで起こる症状です。「肩が重い」「張っている」「こわばっている」と感じる方が多く、日本人に非常に多い症状のひとつです。
軽度のうちは「疲れ」と思われがちですが、進行すると張り感だけでなく強い痛み・頭痛・吐き気・めまい・集中力低下を伴うこともあり、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。また、肩甲骨の動きが悪いと周囲の筋肉に負担がかかり、肩こりが強くなります。
肩こりの原因が単なる筋緊張なのか、頚椎疾患や肩関節疾患など他の病気が隠れていないかを診察で確認します。そのうえで、理学療法(リハビリ)で肩甲骨の動きを改善し、正しい姿勢を保てるようトレーニングを行うほか、姿勢改善やデスク環境の見直し、ストレッチ指導などの生活指導を行います。筋膜の癒着や動きの制限がある場合は、エコーガイド下で筋膜の動きを改善するハイドロリリースを行うことがあります。
強い外力で肩の骨が外れ、繰り返しやすい外傷性疾患
転倒やスポーツ中の接触などで肩関節に強い外力が加わり、上腕骨の骨頭が関節窩(肩甲骨のくぼみ)から外れてしまう状態です。肩関節は人体の中でも特に可動域が広い反面、構造的に不安定なため脱臼が起こりやすく、なかでも前方脱臼が大半を占めるとされています。スポーツ中の転倒や衝突、交通事故のほか、高齢の方では軽微な転倒でも脱臼することがあります。
X線(レントゲン)検査で脱臼の方向(前方・後方・下方など)や骨折の有無を確認します。骨の欠損や骨折の詳細な評価が必要な場合はCT検査、関節唇や靭帯、腱板などの軟部組織損傷の確認にはMRI検査を行います。
まず徒手整復で外れた上腕骨を正しい位置に戻し、整復後は三角巾や装具で一定期間固定して安静を保ちます。その後、リハビリテーションで可動域訓練や筋力強化——特に肩甲骨周囲や回旋筋腱板(ローテーターカフ)のトレーニング——を行い、再発防止を目指します。若年の方やスポーツ選手では再発率が高く、関節唇損傷(バンカート損傷)や骨欠損がある場合は関節鏡視下手術が必要になることもあるため、連携する医療機関をご紹介します。神経や血管の障害が疑われる場合は、速やかに高次医療機関と連携します。
転倒や外傷で起こりやすく、高齢者からスポーツ選手まで幅広くみられる骨折
肩関節を構成する上腕骨近位端、鎖骨、肩甲骨などに起こる骨折です。日常生活での転倒、交通事故、スポーツ中の強い衝突などが原因となることが多く、特に高齢の方では骨粗鬆症によって軽い転倒でも骨折が生じやすくなります。肩は上肢の運動の中心となる部位のため、骨折後に機能障害が残ると日常生活に大きな影響を及ぼします。正確な診断と適切な治療・リハビリテーションが非常に重要です。
上腕骨近位端骨折
上腕骨の付け根部分の骨折。高齢の方に多く、転倒して手をついた際などに発症。強い痛みと腫れ、腕を動かせないなどの症状。ずれが大きい場合は手術が必要になることも。
鎖骨骨折
小児から成人まで幅広くみられる骨折。自転車やスポーツ中の転倒でよく発症。多くは三角巾固定などの保存療法で治癒しますが、ずれが大きい場合は手術が必要になることも。
肩甲骨骨折
交通事故や転落など強い外力によって発症。胸郭や肺の損傷を伴うこともあるため全身の評価が重要。手術が必要となるケースは少ないものの、ずれが大きい場合は手術適応。
X線(レントゲン)検査で骨折の部位やずれの有無を確認し、エコー検査で軟部組織の損傷を評価します。複雑骨折や手術前の詳細な評価にはCT検査、腱板や靭帯の損傷確認にはMRI検査を用いる場合があります。
軽度の骨折やずれが少ない場合は、三角巾や装具による保存療法で固定し、固定後は徐々に可動域訓練を開始して関節拘縮を防ぎます。骨のずれが大きい場合や関節面が壊れている場合、神経・血管を損傷している場合は手術が必要となるため、速やかに高次医療機関と連携します。骨癒合を待ちながらリハビリテーションで可動域訓練・筋力強化を行い、日常生活への復帰を目指します。骨粗鬆症の評価や予防治療もあわせて行い、再発防止に努めます。
TREATMENT
肩に痛みや違和感がある場合、その背後に何らかの疾患が潜んでいる可能性があります。放置すると症状が悪化し、治療期間が長引いてしまうこともあるため、早めの受診が大切です。痛みは片側だけに現れることもあります。
当院では、診察や各種検査を通じて、症状が一過性か慢性化しているのかを見極めたうえで、診断結果に基づいた治療を行います。痛みが強い場合や長く続いている場合には、初期には痛みを和らげる治療を優先し、症状が落ち着いてきた段階で、理学療法士の指導のもと、痛みの原因となっている姿勢や動作の改善に取り組んでいきます。
肩の痛みは、早期の診断と治療が改善への近道です。気になる症状がある方は、一度当院までご相談ください。